髪はたんぱく質でできていて、たんぱく質はアミノ酸でできている。
たくさんの方が知っていることかなと思います。
けど、たんぱく質がどうなって髪ができているのか、知らない方も多いんじゃないでしょうか。
今回はたんぱく質がどうやって髪の毛を作っているか、大学院でアミノ酸とたんぱく質を研究し続けた私がわかりやすく紹介していきますね!
1.たんぱく質を作るアミノ酸を詳しく紹介します
まずは、髪を作っているたんぱく質を作っているアミノ酸についてご紹介していきますね。
アミノ酸って、なんだ
Wikipediaでアミノ酸って調べると、こんな説明がされています。
アミノ酸とは
アミノ酸(アミノさん、英: amino acid)とは、広義には(特に化学の分野では)、アミノ基とカルボキシ基の両方の官能基を持つ有機化合物の総称である。一方、狭義には(特に生化学の分野やその他より一般的な場合には)、生体のタンパク質の構成ユニットとなる「α-アミノ酸」を指す。
もう意味が分からん…って感じですよね。
高校の化学だと出てくると思いますが、アミノ酸の分子式を見ると説明の意味がちょっと分かります。
これが、アミノ酸の一般的な化学式です。
化学の世界では「アミノ基」と「カルボキシ基」を持っている分子をアミノ酸って言います。ってことです。「アミノ基」や「カルボキシ基」は図のような一個の塊です。
このRの部分にいろんな塊がくっつくことで、たくさんの種類のアミノ酸になるんです。
人の体を作っているのは20種類
現在、自然界には約500種類のアミノ酸が見つかっています。けれど、私たちの体を作っているアミノ酸は実は「20種類だけ」なんです。
20種類のアミノ酸
バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アルギニン、グルタミン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、トレオニン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン、グリシン、セリン
1つのたんぱく質を作り出すために必要なアミノ酸の種類、数、結合の順番は、はっきり決められています。
一つでも足りなくなると、筋肉、ホルモン、血液、酵素、抗体など身体が作れなくなってしまいます。もちろん髪も作れなくなってしまいます。
なので、アミノ酸は不足しないように体内に供給してあげることが大切なんです!
この20種類のアミノ酸は体内で合成できるアミノ酸と合成できないアミノ酸があります。
- 体内で合成できないアミノ酸 → 必須アミノ酸
- 体内で合成できるアミノ酸 → 非必須アミノ酸
私たちが肉や魚、穀物を食べると、その中に入っているたんぱく質は一度アミノ酸まで分解されます。そのあと体内で、アミノ酸をたんぱく質まで組み替えていきます。
その時、非必須アミノ酸はほかのアミノ酸から体内で合成できます。なので、不足しても体内で作り出すこともできるんです。けれど、必須アミノ酸はほかのアミノ酸から合成できないんです。体内で作ることができないので、食事からとるしかないんです。
必須アミノ酸
イソロイシン、ロイシン、バリン、ヒスチジン、リシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、スレオニン
非必須アミノ酸
アルギニン、グリシン、アラニン、セリン、チロシン、システイン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸
2.どうやってアミノ酸はたんぱく質になるのか
タンパク質を作る大事な結合「ペプチド結合」
体内で合成されたり、食事から体内に入ってきたアミノ酸は、アミノ酸同士がくっついて、たんぱく質になっていきます。
アミノ酸がたんぱく質に変身するときに大切になるのが、ペプチド結合です。(ペプチド結合はアミノ酸同士がくっつくためのチカラのことです。)
ペプチド結合によってアミノ酸はたんぱく質に変身できるんです。
アミノ酸はアミノ基(-NH2)とカルボキシ基(-COOH)を持った分子のことでした。
アミノ基とカルボキシ基は反応してくっつくことができます。その時に水が出てくるので、この反応は脱水縮合といいます。
脱水縮合すると、2つのアミノ酸がくっついて1つになることができるんです。アミノ酸が数個くっついたものをペプチドといいます。小さいたんぱく質のイメージです。
そしてペプチドがくっついたときできた新しい部分(結合)をペプチド結合と呼びます。図の緑色の部分です。
このペプチドが別のアミノ酸とまた脱水縮合すると、ペプチドにアミノ酸がくっついて、どんどんどんどんペプチドは大きくなっていきます。
ペプチドが大きくなるとたんぱく質になるんです。
大体、アミノ酸が2~50個くらいくっついたものをペプチド、50個以上くっついたものをたんぱく質って呼んでいます。
3.たんぱく質同士がくっついて髪ができていく
アミノ酸がくっついていくとペプチドになり、ペプチドとアミノ酸がくっついていくとたんぱく質が出来上がります。
このたんぱく質同士がくっついて、髪が出来上がっていくんですが、たんぱく質同士にはたくさんのくっつき方があります。
これからご紹介する4つのチカラがたんぱく質同士がくっつくための結合(チカラ)です。これらを駆使してたんぱく質はキューティクルになったり、コルテックスになったりしていくんです。
たんぱく質同士の結合は大きく4つに分けられます。
- 水素結合
- イオン結合
- シスチン結合
- ペプチド結合
シスチン結合やペプチド結合はたんぱく質の分野でよく使われる言葉です。シスチン結合はジスルフィド結合、ペプチド結合はアミド結合なんて呼ばれ方もします。(化学の分野ではこっちのが一般的です。)
結合(くっつく力)にも強さがあります。
ペプチド結合>シスチン結合>イオン結合>水素結合
この順番でくっつく力は弱くなっていきますが、どれも髪を作り、形作るために必要なんです。
水素結合
水素結合は4つのチカラのなかで一番弱い結合です。
水が間に入っていくと簡単に切れてしまいます。ですが、水が乾くとまたつながります。
寝ぐせの原因も実は水素結合なんです、寝ぐせは水をつけると直せますよね。寝ている間に水分が乾いて水素結合ができることで髪がその形で固定されてしまうので、寝ぐせがついてしまうんです。
逆に、濡らした髪を乾かすときに髪がセットできるのって、水素結合のおかげなんです。濡れた髪が乾くときに水素結合ができるので自分の好きな髪形にヘアセットできるんですよ!
イオン結合
次に強いのがイオン結合です。
タンパク質を作っているアミノ酸には側鎖という部分があります。Rの部分です。Rの部分にいろんな構造がはまると、いろんな種類のアミノ酸になるんです。
Rの部分に当てはまる構造によって、プラスになりやすかったり、マイナスになりやすかったりします。
「味の素」の原料のグルタミン酸は側鎖がマイナスになり、「エナジードリンク」に入っているアルギニンは側鎖がプラスになる構造をしています。
この性質はたんぱく質になっても同じなので、たんぱく質は、種類によってプラスになりやすい部分と、マイナスなりやすい部分があります。
イオン結合はたんぱく質のプラス部分とマイナス部分が引き合うことで起きる力です。プラスとマイナスが引き合うのってイメージできると思います。まさにそんな感じです。
なので、たんぱく質はプラスになりやすい部分やマイナスになりやすい部分を持っています。その部分同士が引き合う力がイオン結合なんです。
シスチン結合(ジスルフィド結合)
3つ目の結合はシスチン結合です。化学の世界だとジスルフィド結合という呼び方のが一般的です。
髪を構成するアミノ酸の中にシステインというアミノ酸がありました。タンパク質の中に入ったシステイン同士がくっつくとシスチン結合が出来上がります。
システインは側鎖(Rの部分)も硫黄原子(S)を持っています。この硫黄原子同士がくっついてシスチン結合ができます。
シスチン結合はパーマにめっちゃ関係があります。シスチン結合を切ったり、くっつけたりすることで、美容師さんはパーマをかけています。
ペプチド結合(アミド結合)
髪を作っているたんぱく質の一番大切な結合のペプチド結合。
この結合が切れてしまうと、たんぱく質が途中で切断されてしまうので、結果的に髪がブチっと切れてしまいます。
これが切れ毛です。
ペプチド結合はとても強い結合なので、よほどのことがないと切れませんが、ハイダメージ毛だと切れ毛ができてしまいますよね。
実は、髪によほどのことが起きてるサインなんです…
5.まとめ
- タンパク質はアミノ酸がペプチド結合でつながってできている
- たんぱく質同士がつながることで髪ができていく
- 「水素結合」、「イオン結合」、「シスチン結合」、「ペプチド結合」の4つの結合でたんぱく質同士はくっついていく