pHって聞いたことあるけど、実際何の意味があるのかよくわからない。
大事そうなのはわかるけど、どこに使われてるの?
pHって私たちの生活の中でも実はよく使われているんですよ。
特に、髪との関係がとっても深いんです。
今回は、大学・大学院でずっと化学の研究をしてきた私がpHって何なのか、pHと髪の深すぎる関係をご紹介していきますね!
1.まずそもそもpHってなに?
まずは読みかたから
「pH」ってなんて読みますか?
ピーエイチ?ペーハー?
ピーエイチは英語読みで、ペーハーはドイツ語読みなんです。
どっちも、読んでる人はいます。
学会でもペーハーって言ってる人もいますし、ピーエイチって言ってる人もいます。
研究現場になるとペーハーって言葉のが飛び交ってたかも…
学校の授業でも、昔はpHはペーハーって読むと教わったと思います。
昔はpHの読み方まで学校の指導要領に書いてなかったので、pHという言葉が入ってきたドイツ語読みのペーハーが定着していきました。
ただ、実はpHの読み方って、JIS規格でピーエイチって読みましょうって統一されているんです。
JIS規格は日本が決めているモノづくりのための規格のことです。その中に単位の読み方の規格もあります。例えばkgをキログラムと読むとか…
pHがわかると、液体の性質がわかります
pHは水素イオン濃度指数のことです。
何のことか、わけわかんないですよね…
砂糖を水に溶かすと砂糖水になります。
どのくらいの砂糖がどのくらいの水に溶けているかで、砂糖水の濃度が変わりますよね。
pHも同じことです。
ざっくりいうと、水素イオンがどのくらい水に溶けているかを表しているんです。
これが、何の意味があるかというと…実は、水に溶けてる水素イオンの濃度で水の性質が変わってくるんです!
それをわかりやすくするのが、pHなんです!
水素イオンが増えると水酸化物イオンが減る?
pHは水素イオン濃度のことですが、水素イオンと対応して水酸化物イオンというものがあります。
水はH2Oですよね。そんなの知ってるよ!って突っ込まれそうですが…
H2Oは普通は電離しませんが、少しだけ、H+とOH-に分かれることができます。
H+を水素イオン、OH-を水酸化物イオンといいます。
水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度を掛けた値は、25℃ならどんな水溶液でも一定という定義があります。
なので、水素イオン濃度が増えれば、水酸化物イオン濃度は減っていきます。逆に水酸化物イオン濃度が増えれば、水素イオン濃度は増えていきます。
pHは水素イオン濃度で表すことができました。pHが増えたり減ったりするのは、水素イオン濃度が増えたり減ったりすることです。それは同時に水酸化物イオンが増えたり減ったりすることなんです。
この考え方は次に紹介する酸性・中性・アルカリ性の考え方で大事になってきます。
2.酸性・中性・アルカリ性
「酸性・中性・アルカリ性」
この言葉も普段の生活の中でよく聞く言葉だと思います。
お肌と同じ弱酸性とか
赤色リトマス紙が青くなるとアルカリ性とか、学校の実験でやったの、なんとなく覚えていませんか?
実は、酸性・中性・アルカリ性も水の性質を表しています。そして、水の性質を表しているpHととっても深くかかわっています。
pHと酸性・中性・アルカリ性
pHは水素イオン濃度でした。
水素イオンがどのくらい溶けているかによって、pHは0~14に分けらます。
水素イオンがたくさん溶けているとpHは小さくなり、水素イオンの量が減っていくとpHは増えていきます。
この水素イオンの濃度が水溶液の酸性・中性・アルカリ性を決めています。
水素イオンがたくさんあると、水溶液は酸性で、水素イオン濃度が低くなっていくにつれて、中性・アルカリ性に代わっていきます。
- 水素イオン濃度が高い → 酸性
- 水素イオン濃度が低い → アルカリ性
さらに!
pH0~7付近が酸性の範囲で、pHが7付近~14がアルカリ性の範囲になります。pH7がちょうど中性になります。
ココがポイント
水素イオン濃度が低いと、水溶液はアルカリ性でした。水素イオン濃度が低いって実は、水酸化物イオンの濃度の高いってことなんです。
アルカリ性は、水酸化物イオンの濃度が高いっていう説明がされることもよくあります!
ここまでのまとめ
- 水素イオン濃度でpHがきまる
- pHが小さいほど水素イオンがたくさん溶けている。pHが大きいほど水素イオンが少ない。
- 中性はpH7、pHが0~7付近までが酸性、pHが7付近~14までがアルカリ性。
ここでもう一つ大切なお話です。
酸性やアルカリ性にも強い、弱いがあるんです。
よく、お肌と同じ弱酸性って言葉、聞きませんか??
酸性はpHが0~7付近ですが、pH1とpH6では、酸性の強さが違ってきます。(水溶液中に水素イオンがいっぱいあると酸性は強くなります)
レモン果汁はpH2.0くらい、お酢のpHは3.0くらいで酸性。一方で、健康な髪や肌のpHは4.5~5.5くらいに保たれているので、弱酸性なんです。
アルカリ性も見てみましょう。油汚れを落とすのに使う重曹はpHが8.0くらいの弱アルカリ性。石鹸水もpH9~10くらいの弱アルカリ性。
ヘアカラーやブリーチで使う薬剤はpH11を超えてくるものをあるのでアルカリ性がかなり強くなってきます。
3.髪とpHの深すぎる関係
髪とpHってとっても関係が深いんです。
髪はたんぱく質でできていることを知っている方も多いと思いますが、髪はざっくりいうと、3層構造でできています。
- 髪表面を守っているキューティクル
- 髪の80%以上を占め、髪のハリコシや太さを決めるコルテックス
- まだはっきり役割のわかっていないメデュラ
髪内部のたんぱく質は髪を形づくるために、たんぱく質同士もくっつく必要があるんです。たんぱく質同士でくっついてもっと大きくなるために、いろいろな方法で結合していきます。
たんぱく質同士の結合は大きく4つに分けられます。
- 水素結合
- イオン結合
- シスチン結合
- ペプチド結合
シスチン結合やペプチド結合はたんぱく質の分野でよく使われる言葉です。シスチン結合はジスルフィド結合、ペプチド結合はアミド結合なんて呼ばれ方もします。(化学の分野ではこっちのが一般的です。)
ここでは、pHと一番深くかかわっているイオン結合に注目しましょう!
イオン結合はたんぱく質内部のプラス部分とマイナス部分が引き合うことで起きる力です。プラスとマイナスが引き合うのってイメージできると思います。
イオン結合はキューティクルとpHにとっても大きく関係しています。髪は弱酸性が一番いい状態って言われる理由もこのイオン結合にあります。
一番強くしっかりしたイオン結合が髪内部で形成できるのが、pH4.5~5.5くらいなんです。
pHが変わるとこのイオン結合が敏感に反応します。イオン結合を切ったり作ったりするのって、pHでできるんです。
キューティクルの開く・閉じるって、ざっくりいうとイオン結合が切れる・作られるでコントロールされているんです。
- イオン結合が切れる→キューティクルが開く
- イオン結合ができる→キューティクルが閉じる
パーマやヘアカラーもpHを使っています。
パーマやヘアカラーはどうしても髪の中に薬剤を浸透しないといけません。
キューティクルが閉じていると髪の内部に薬剤は入っていけませんよね。キューティクルって髪表面のバリアなんで…
だから、薬剤を髪内部に浸透させるために、キューティクルを開いてあげる必要があるんです。
そのために、パーマ液やカラー剤はpH10~12のアルカリ性なんです。
5.まとめ
いかがでしたか。
今回はpHと髪の関係をご紹介しました。
pHは私たちの生活の中でたくさんのところで使われてるんですが、化学の考え方なんでちょっとわかりにくいところもありますよね…
髪とpHの関係がわかるとカラーやパーマをかけるのが怖くなりそうですが、髪の色や形状をコントロールするには、どうしてもアルカリ性の力が必要なんです。
アルカリ性や酸性の状態だと髪にどんな影響があるのか、しっかり理解して使っていくことが大切です。